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鳥取地方裁判所 昭和56年(わ)17号 判決

本籍

鳥取県米子市四日市町七一番地

住居

鳥取県米子市美吉九八番地の八

新聞業

渡邊壽夫

大正一二年七月五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官丸山恭出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、鳥取県米子市角盤町四丁目一四三番地に主たる事業所を置き、建設工業新聞の名称で業界新聞の発行による事業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、新聞発行による収入金の一部を除外して仮名、借名の普通預金あるいは仮名、無記名の定期預金を設定するなどの不正な方法により自己の所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五二年分の実際の所得金額は三〇、九六三、六一八円で、これに対する所得税額は一二、六九六、二〇〇円であったにもかかわらず、同五三年三月一〇日同市西町一八の二番地所在の米子税務署において、同税務署長に対し、所得金額は、一、一一五、三四三円で、これに対する所得税額は三、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税と右申告税額との差額一二、六九二、七〇〇円の所得税を免れ、

第二  同五三年分の実際の所得金額は三六、〇四八、五三一円で、これに対する所得税額は一五、六八二、六〇〇円であったにもかかわらず、同五四年三月一五日右米子税務署において、同税務署長に対し、所得金額は一、二一九、七三七円で、これに対する所得税額は四、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税と右申告税額との差額一五、六七八、四〇〇円の所得税を免れ、

第三  同五四年分の実際の所得金額は五七、〇六五、四一八円で、これに対する所得税額は二九、〇三一、三〇〇円であったにもかかわらず、同五五年三月一三日右米子税務署において、同税務署長に対し、所得金額は一、五一六、一四四円で、これに対する所得税額は二五、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税と右申告税額との差額二九、〇〇六、一〇〇円の所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書三通

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一、国税査察官応武郁夫作成の「脱税額計算書及び修正損益計算書の送付について」と題する書面

一、大蔵事務官作成の調査事績報告書一〇通(請求書7 51.ないし53.58.62.71.ないし74.)

一、押収してある青色申告者書類つづり一綴(昭和五六年押第七号の54)

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(請求番号2)及び調査事績報告書(請求番号48)

一、押収してある所得税確定申告書一枚(昭和五六年押第七号の五三の二)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(請求番号3)及び調査事績報告書(請求番号49)

一、押収してある所得税確定申告書一枚(昭和五六年押第七号の五三の三)

判示第三の事実について

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(請求番号4)及び調査事績報告書二通(請求番号50.61.)

一、押収してある所得税確定申告書一枚(昭和五六年押第七号の五三の四)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、懲役と罰金を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一ないし第三の各罪所定の罰金額を合算しその刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一、〇〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは同法一八条により金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、本件は計画的犯行であるうえほ脱金額も多額で悪質であるが、発覚後修正申告をして本税は勿論重加算税、延滞税も納付し、反省態度を示していること、これまで罰金刑一回を除き他に前科前歴がないことなどを斟酌し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 豊永格)

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